「アルテ」総合プロデューサー 水上洋子インタビュー

本物のオーガニックコスメの
見本になりたいから
天然成分100%は当たり前、
製造過程でも化学成分は一切不使用。
植物の力が実感できる「アルテ」のコスメ
ここ数年オーガニックコスメという
言葉をよく聞くようになりました。
オーガニックコスメにもいろいろ
ブランドがありますが、「アルテ」は
どういった特徴があるのでしょうか。
「アルテ」設立にあたって、
総合プロデュースした水上洋子さんに
お話をうかがいました。

インタビュー担当:小崎まどか(オーガニックコスメライター)


世界一厳しいオーガニックコスメ認証基準の旗振り役が「アルテ」

―いきなりですが、「アルテ」はどのようなブランドなのですか?
水上:「アルテ」はそもそも化粧品メーカーが立ち上げたのではなく、オーガニックライフを提言してきた「アイシス」という雑誌がもとにあります。 「アイシス」を刊行していたのは17、8年前ですが、オーガニックコスメをすすめたくても国内にはほとんどなく、海外のオーガニックコスメと言われているブランドも調べてみると少ないながらも化学合成成分を使っているものばかり。それなら自分たちで国産オーガニックコスメを作ろう!という勢いで立ち上げました。すすめる側としても消費者の立場としてもまやかしのない安心安全な化粧品が欲しいという思いは一緒ですから。 国産にこだわったのは、日本で暮らす日本人にはその土地で育つ植物がやはり合いますし、国内なら実際に見て確認もできるからです。

―「アルテ」は「アイシス」誌だけではなく、「日本オーガニックコスメ協会」も関係していますよね。
水上:海外でのオーガニックコスメ認証は、じつは基準がゆるいものが多いんです。たとえばヨーロッパで最大の「コスモス」という認証基準では、一部の石油合成成分を認めています。最低限であり肌に影響はないなどと言っていますが、防腐剤のベンジルアルコールや乳化剤のセテリアルアルコールなど、日本の旧表示指定成分も許可されています。これではオーガニックコスメとは言えません。化粧品メーカーが主体となって定めた基準のため、メーカーに都合がいいようになっているわけです。
日本人はヨーロッパに弱いですよね(笑)。“ヨーロッパの”オーガニック基準といわれると、すごく進んでいて信頼できると思いがちです。でも実態はそうではない。それなら本物のオーガニックコスメ基準を自分たちで作るしかないと。そこで「日本オーガニックコスメ協会」を設立して、石油由来はもちろん合成成分を一切使わない本当のオーガニックコスメの基準を作りました。

―「アルテ」の設立には「日本オーガニックコスメ協会」が関わったということですか?
水上:母体は一緒ですが、コスメを売るための「アルテ」というより、理想的なオーガニックコスメはどういうものなのかを実践してみせるためという意味合いの方が大きいですね。「コスモス」のようなあいまいなものではなく、とことん天然成分100%にこだわったオーガニックコスメは作ることができる、という証明です。「日本オーガニックコスメ協会」の基準は世界一厳しいのですが、決して机上の空論ではないことを各化粧品メーカーに示すのが一番の目的ですね。



薔薇を植え、育て、一切妥協のない100%天然成分のクリームが完成

―「アルテ」は国産の植物を原料にしているものが多い印象がありますが、最初に登場したローズシリーズについてはどうなのでしょう。
水上:薔薇はやはり「花の女王」。美しさと素晴らしい香りだけでなく、すぐれた薬効と美肌効果は古来から知られています。女性ホルモンを活性化させる働きも証明されていますのでエイジングケアにも最適です。
そんな薔薇の化粧品を作りたいと15年くらい前から考えていたのですが、これがいくら探しても無農薬のものが見つからない。考えてみると薔薇は消毒など手入れが大変な花ですから。
無農薬栽培の薔薇がないなら作るしかない!と、またゼロから作る流れになりました(笑)。

―なければ作ると。なかなか諦めませんね。
水上:思い込んだらしつこいですから。長野のハーブ生産者に無農薬での薔薇の栽培をお願いし、まずは植えるところから始めました。
ちなみに薔薇と一口に言っても、よく見る派手な薔薇ではありません。ああいった薔薇は交配を重ねたハイブリッドローズというのですが、美しさのみを追求したものです。それに対して昔ながらの品種がオールドローズです。薬効も香りも高いのが特長で、木自体も丈夫です。
苗木が育って実際にローズパウダーができるまで5年もかかってしまいました。

―新しく「ローズモイスチャークリーム」が発売されましたね。これはどういったものですか。
水上: ここまで100%天然成分にこだわったクリームは今までなかったと思います。というのも、水分と油分を混ぜ合わせたクリームや乳液には乳化剤と防腐剤が欠かせないのですが、それを天然成分でとなるとなかなか安定しないのです。一般に販売できるクオリティのものを作るのはとても難しくて、そのため「コスモス」でも合成界面活性剤と合成防腐剤は認められているものがいくつもあります。
この乳化と防腐の壁を乗り越えるのが大変でした。

―その壁を乗り越えられたということですね。
水上:はい。防腐剤としては「レウコノストック」という大根の根部分を発酵したエキスが非常に有効だとわかりました。製造を委託している会社には合成成分を一切使わず、レウコノストックで防腐するよう依頼したのですが、製造会社の化学者には酷だったようです。それだけでは不安だとオウバクやカンゾウなど、防腐効果が期待できる植物成分をいっぱい加えた試作品を持ってきました。相乗効果でとても安定した防腐効果が得られたので結果オーライです。
乳化にはレシチンとローカストビーンガムを使用しています。その程度ならあまり珍しくない気もしますが、水添でないレシチンはあまり見ませんね。水添レシチンはもとが天然成分の合成界面活性剤です。レシチンの原料も遺伝子組み換えではないものを使っています。
製造会社にとっては無理難題を押し付けられたかたちだったと思いますが頑張ってくれました。2年もかかりましたが、完全に天然成分100%で未開封で3年は変質しないクリームができあがりました。

「アルテ」は植物自体、製造過程、キャリーオーバーすべてがクリア

―「アルテ」はハーブ、ハーバルウォーターが基本にあると思いますが、それにも何かこだわりがありますか?
水上:もちろん。たとえば成分表示で「ラベンダー水」とあれば確かに天然成分ですが内容はさまざまです。「アルテ」で使っているハーブはすべて長野県で無農薬栽培されたもので、水は中央アルプスの超軟水を使用しています。パーフェクトを目指し、可能な限り良い素材にこだわっています。
ハーバルウォーターに防腐剤として加えているユズ種子エキスなども同じことが言えます。また植物を抽出する溶剤は、いわゆるキャリーオーバー成分なので抽出法を明記する義務はありませんが、「アルテ」では、合成成分の溶剤は使わず、有機栽培の穀物を発酵させたお酒による抽出をしています。

―今後の「アルテ」の課題や目標は何でしょうか。
水上:「日本オーガニックコスメ協会」の認定基準をクリアした化粧品にはJOCAマークをつけることができます。もちろん「アルテ」は全商品についています。JOCAマークが広まり、JOCAマークがついた化粧品がもっと増えて消費者の選択肢が増えてほしいですね。
「アルテ」は日本のオーガニックコスメの水準を上げるという役割があると考えています。実際に合成成分ゼロで作ることが出来ているわけですから、ほかのコスメメーカーにも製造会社にも参考にして頑張ってもらいたいです。そして世界一厳しい日本発のオーガニックコスメ基準がもっと世界的に認知されていくことを願っています。
より厳しい基準は、オーガニックコスメがさらに消費者から信頼され、支持されることでしょう。また次世代の健康を守る上でも貢献できることと思います。